報告書A 箱庭プラネッツ

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「住民たちは負の感情を一定以上溜め込むと、暴動を起こしてしまう。その哀れな救世主とやらが殺されるとしたら、騒動に巻き込まれた結果に、というパターンも大いにあり得る」 「それも知ってる」 「なんだ、思ってたより勉強してるじゃないか」  真島が意外と言いたげな声で言った。これで多少は悪評をチャラにできるかもしれない。内心で課長に感謝した。 「ともかく、例の救世主キャラの事は見守っていてやれ。危うくなったら即誘導。そうしてやらなきゃ、下手したら死なせちまうぞ」 「ねぇ、人と関わる事が危険なのは分かったよ。だとすると、山奥に隠れ住まなきゃいけないって訳?」 「いや、そうでもない。一度でも上手いこと信頼や好感を得られれば、無意味に嫌われる事も無くなる。キッカケ次第だ」 「ふぅん。色眼鏡が外れる感じかな?」 「そんな所だ。さて、そろそろ切らせてもらうぞ。業務がつかえてんだ。新しいことが解り次第連絡する」 「お願いね。こっちからも動きがあれば連絡するよ」  受話器を置き、話の内容を振り返った。このトラブルは事実上の対処不能。レイン君は役職を据え置きのまま生きねばならず、他住民からの迫害と戦う運命にある。救世主枠のキャラクターが、だ。  こんな人物が果たして、世界の中心となってイベントを盛り上げられるのか。それは夢のまた夢だと言えた。 「イベントの成功と、これ。どっちが夢物語かなぁ」     
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