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身が黒いからですか、とまでは聞かないでおいた。僕はとにかく人から嫌われてしまう宿命を背負っている。些細な指摘すら危険を伴うので、言葉の選択には細心の注意を払う必要がある。迂闊にセンスを嗜めて、不要な反感を買いたくはなかった。
それにしても、この猫がシスターのペットだとは知らなかった。さっき突然走り出したのは、飼い主の気配でも感じ取ったからだろうか。
今もミクロは彼女の肩に乗って甘え倒している。この子は居場所を見つけたのだと思うと、胸に痛みが走る。本来なら喜ぶべき場面だけど、何か裏切られたような気分になり、少しだけ戸惑ってしまった。
「ところでシスター」
「オリヴィエです。名乗るのが遅れて申し訳ありません」
「ああ、ごめんね。僕はレイン。よろしく」
「自分をさしおいて、ミクちゃんを先に紹介してしまいましたね」
「そ、そうだね。何だか可笑しいね」
「ふふ。本当ですね」
オリヴィエと名乗った少女は、これまでの住民とは少し雰囲気が違った。僕に対して警戒はしても、一度だって敵意を向けていないのだ。今は友好的とすら思えてくる。
「レインさん。あなたは不思議な方ですね。そのような格好をされているから、邪悪な方かと思いきや紳士的です。そして勇敢でありながら、同時に礼儀正しくもあります」
「ええと、僕の外見は酷いものに見えてるらしいけど、ちゃんと普通の格好をしてるんだよ」
「まさか。どこから見ても際どいお姿ですよ」
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