第7話 試練と書いて

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「そうだなぁ、触れてみたら分かるんじゃないかな」 「触れる……ですか?」 「ごめんよ、何でもない。そんなの嫌に決まってるよね」 「いえ。そんな事はありません。失礼します」  彼女はそう言うと、僕のお腹の部分に指を伸ばした。静かに触れられると、その感触は布越しに伝わってきた。自分からすれば、服の上から触られた時と変わらない。    でもオリヴィエは違ったようだ。目は驚愕したように見開き、指を何度も何度も押し当ててきた。目の前で起きている出来事が、信じられなくて仕方が無いとでも言うように。 「確かに仰る通り、衣服の感触があります。これは魔法の一種ですか?」 「いや、違うと思う」 「では、何なのでしょう?」 「うぅん。試練、かな。女神様から与えられた試練……?」 「まぁ! そうとは知らず不躾な真似を……これまでの非礼をなんとお詫びすれば」  そう言うと祈るような仕草をした。顔は悲痛一色という様子で、見せかけの謝罪では無さそうだと感じる。 「いやいや、気にしないで。僕は平気だから」 「誠に申し訳ありません。このお詫びは必ず。そして、助けていただいたお礼もです」 「それはともかく、早くここから出ようよ。連中が戻ってきたら厄介だよ」     
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