第7話 試練と書いて

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「確かに、ここに留まるのは得策ではありませんね。町へと戻りましょう」 「道中は魔物が出て危険だから、町まで送ってあげる……」 「どうかされましたか?」  常識で考えれば、これから安全な場所まで送り届けるべきだろう。でも僕はその『安全な場所』で殺されかけたばかりだ。だからどの辺りまで付き添えば良いか、その判断ができないでいた。 「町までは無理か。町の外れならなんとか……」 「レインさん。ご気分が優れないように見えますが」 「いや、その、何と言ったもんかな」 「もしや、お困りごとですか? そうでしたらお力添えさせていただきますよ」  取り繕う理由も無かったので、これまでの経緯を全て白状した。この試練(のろい)のせいで全ての住民に疎まれる事。そして謂れなき罪により殺されかけてしまった事。今もまざまざと蘇る恐怖を、包み隠す事なく洗い浚(ざら)い話してみた。まるで牧師に告白する時のように。  するとオリヴィエの瞳は潤み、肩が小刻みに震えだした。そして僕の頬を優しく撫でて言う。 「辛かった事でしょう……どれほど貴方の魂が傷つけられたか、私ごときでは想像することも出来ません」 「ありがとう。そう言って貰えるだけで、少し救われた気がするよ。そんな訳で、僕は町には戻れない……」     
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