68人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
「貴方にかけられた嫌疑は、私が一身を賭して晴らしてみせましょう」
「……はいぃ?」
予想外の申し出に、つい間抜けな声を出してしまった。オリヴィエは冗談やホラを吹いたつもりは無いらしい。濁りのない目のままで話を続けた。
「町の方々と仲違いしたままでは心苦しいでしょう。何かと不便でもありますし」
「いや、でも危険だよ。僕が戻れば大変な事になるよ」
「私はブレイメルに赴任してより、短くない時間を過ごして参りました。少なからず信用もあります。話くらいは聞いていただけるでしょう」
「そうかなぁ、でもなぁ」
「まずは試してみませんか。善は急げと申します」
オリヴィエはにこやかに微笑むと、僕の手を握りしめて先導した。正直不安だ。あの場所に戻る事は恐怖そのものでしかない。
それでもだ。この手を伝う温もりが僕を前へと動かした。彼女の金色に光る髪が風に揺れて靡く。それがまた、不思議な安堵感を与えてくれるのだった。
この先に希望はあるのか。彼女が突破口を切り開いてくれるのか。その前途を占うように、木漏れ日が薄暗い森を明るく照らしていた。
最初のコメントを投稿しよう!