第8話 この道の先には

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 正直なところ、オリヴィエを完全に信じた訳じゃない。今だって心のどこかで『僕を連中に引き渡すつもりでは』と疑ってすらいる。信じたくなる一方で疑惑の目も向けているのだ。相反する思考はせめぎ合い、右に左と傾きかけては揺り戻される事を繰り返した。  そうして結論を出せないまま、その時は訪れた。 「ようやく森を出ましたね」 「そうだね、目が眩しいや」 「あそこに人だかりが……。確かにレインさんが仰る通り、大事になっているようですね」  強い日差しに目を細め、空いた手で日陰を作った。そうして見えたのは町外れの長閑な光景ではない。今も先程と変わらず、物々しい空気を醸し出す住民たちの姿だった。  集団の内で誰かがこちらに気づくと、鋭い声をあげた。すると先頭の男が単身で前に出る。その壮健な体にはロングソードと金属盾があり、一帯の警備を担う衛兵だと察しがつく。彼は緊張した面持ちを保ちつつも、どこか安心したような声をあげた。 「オリヴィエ、無事だったか!」 「はい。ご心配をおかけしました。こちらのレインさんのお陰で、どうにか事なきを得ました」 「……その男はッ!」  男の目が僕の方へ向くと、歓迎ムードは一変した。体勢を整え、剣の切っ先がこちらに向けられる。いつでも切りつけられる構えだ。背後で見守っていた住民たちも途端に色めき出す。     
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