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「まぁ、それくらいなら良いけどさ……。上手くいくかなぁ」
「今度こそ成功させてみせましょう。こう見えても口は達者な方なのですよ」
オリビィエの先導で、通り沿いの宿屋へと入店した。内装は古めかしくとも、手入れの行き届いている印象を受けた。宿泊料金もそれなりの額になるだろう。来客に気づいてか、カウンターの奥から店主が姿を現した。それは恰幅の良い40歳くらいの男だった。
「いらっしゃい。ムシケで宿ならウチに来いってね。素泊まりは一人7ディナ、食事付きなら10ディナ……」
「2人で1部屋をお願いします。食事は不要です」
「フン、泊まりたきゃ2000ディナ寄越しな」
愛想が良かったのも最初のうちだけだった。僕の姿に気づくと舌打ちをし、激しく睨み付けてくる。提示された額も非現実的なものであり、事実上の宿泊拒否を言い渡されてしまった形だ。
「2000とは尋常ではありませんね。冗談がお好きなのですか?」
「アァ? 皮肉もわかんねぇのか。だったらハッキリ言ってやる。失せろ」
「我々が何か無礼を働きましたでしょうか? 貴方の振る舞いは商売人、いえ、良識を持つ大人からかけ離れておりますよ」
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