第11話 ホラ以上の嘘未満

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 ここで店主と僕の声が綺麗に重なった。勢いづいた結果、とうとう嘘が飛び出てしまったのだ。そして悪い事は重なるもので、聖者の噂はその日のうちに広まってしまったのだ。僕の出で立ちが注目を浴びすぎたからだろう。けれどオリヴィエは特に気にした風ではない。むしろ「実際に聖者のごとく振舞っていただければ、嘘にはなりません」と強弁する始末だ。  僕としては別に、聖者だろうが何でも良かった。ただ町の人たちに受け入れて貰えるなら。しかし、ひとたび噂になってしまえば、単なる風来坊では居られなくなる。翌日には早くも、厄介ごとの相談が僕の元へと届けられるようになってしまう。これが人生の転機になるのだけど、この時の僕はまだ気づくハズもなかった。
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