第12話 洞窟の怪

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「まず1点目。貴方の名を売ることで、ムシケだけでなく他の町の人々からも信頼を得やすくなります。2点目。武具店と誼をもつと、掘り出し物を提供いただけるなどの特典があります」 「なるほどなぁ。3つ目は?」 「人の寄り付かない暗がりで、若い男女が2人きり。当然何かが起きてしまうでしょう」 「急に何の話!?」 「ああっ! 密行魔法(スニーク)など唱えて……私をどうするおつもりですか!」 「魔物避けだからね? そして静かにしてね?」  オリヴィエは真顔で冗談を言う癖がある。真面目な話の最中でも織り混ぜてくるので、聞いてるこっちとしては気が抜けない。自然と会話のペースも握られがちになり、彼女の口が達者というのも何となく頷ける想いだった。  それはさておき洞窟内部へ。灯りの松明はお任せして、自分は警戒に専念することにした。魔法で気配を消し、はぐれない為にオリヴィエの手を掴む。その手が小刻みに動き、僕の手のひらをくすぐってきた。ギュッと握りしめる事でイタズラ心を制圧する。  中は立派な魔物の巣だった。グリーンスライムや、新顔となる『角ネズミ』の集団が、空洞のあちこちで見受けられた。刺激しないよう慎重に通りすぎていく。どちらの魔物も暗がりにこもるだけあって、音に敏感なタイプであったのは幸いだ。僕らが至近距離に居たとしても、大した反応を見せなかったのだから。     
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