第14話 祭りの後

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第14話 祭りの後

 聖者騒動から数日が過ぎた。あの演説直後に抱いた不安は取り越し苦労となり、ムシケの町は既に落ち着きを取り戻している。熱狂とは冷めやすいと聞いていたけど、身をもって体験するのは今回が初めてだ。  正直なところ、聖者だ救世主だと崇められなくてホッとしている。道ですれ違う人に「レインさん、こんにちわ」とか「今日は天気が良いですね」と話しかけられるのだけど、それくらいで丁度良い。さすがに「陰部君、元気にしてる?」と声をかけられた時は無視したけど、ともかく自分としては収まりの良さを感じている。 「これは一体どうした事でしょう。一時は誰もが情熱に溢れ、それこそ新国家でも樹立しかねないほどに崇敬の念が感じられましたのに」  オリヴィエが珍しく不機嫌だ。どうやらこの状況を快く思っていないらしい。町の様子を目にしては愚痴を吐くようになった。   「勘弁して欲しいね。僕はそんなもの嫌だよ」 「そうなのですか? ではレインさんは、今後どうなりたいのです?」     
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