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第15話 心の傷跡
ムシケにやって来て既に10日が過ぎた。街の人たちとは相変わらず良好な関係を築けており、仕事も今のところ順調で途切れてはいない。だから財布もだいぶ暖かなものになっていた。
「ねぇオリヴィエ。そろそろ部屋をふたつ取らないかい?」
1日あたりたった2ディナを上乗せするだけで、別々の部屋に泊まることが出来る。何かと窮屈な相部屋暮らしに終止符を打てるのだ。だけどオリヴィエは僕の提案に乗らなかった。まさに即答。迷う素振りすら見せようとはしない。
「どうしてその様な事を……私に何か不快な言動がありましたか?」
「いや、そうじゃなくてね。お金に余裕があるから部屋を分けようっていう話なんだけど」
「今まで通り1部屋で十分です。不測の事態に備える為にも、無用な贅沢は止めておきましょう」
「これが贅沢に入るのかなぁ」
「不相応だと常日頃感じておりました。むしろ、一番安い部屋に移りたいくらいです」
今の部屋は2人用では最安値の部屋だ。それをオリヴィエが知らないはずはない。だから発言の意図が見えず、少しばかり考える時間を要した。
「もしかして、1人用の部屋に移れと言ったの?」
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