第9話 物は言いよう

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第9話 物は言いよう

 明るいうちに食べ物を探す事。それが僕たちに課せられた最優先課題だ。可能ならば陽が高いうちに見つけたいのだけど、辺りは民家ひとつない草原だ。街道の人通りも極端に少なく、商隊に出会えるかどうかも望み薄だ。もっとも、手持ちの10ディナだけで買えるものなんか、たかが知れているのだけど。 「どうしよう。あそこの森に行けば、何か果物くらい見つからないかな?」  僕の提案にオリヴィエは首を横に振る。 「止めておいた方が宜しいでしょう。備え無しに見知らぬ森に足を踏み入れたなら、行き倒れになってしまうでしょう」  真っ当な意見だと思う。でも僕らの境遇は、イチかバチかの選択を迫られる程に追い詰められていると思う。場合によっては僕一人で潜り込む事も覚悟しておこう。そんな悲壮な決意を胸に歩き続けた。しばらく道なりに進むと、オリヴィエが蹲(うずくま)ってしまう。旅の疲れが堪えたのかもしれない。 「どうしたの? そろそろ休憩にしようか?」  提案しながら顔色を伺ってみると、意外と元気そうだった。歩けなくなるほど消耗しているようには見えなかった。 「ああ、すみません。休みたかった訳では無いのです。これをご覧ください」     
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