第10話 魔法のある暮らし

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第10話 魔法のある暮らし

 ムシケの町まで残り半分という所で、僕たちは街道から少しだけ外れた。うっかりではなく意図的に。目的は魔物と遭遇する事であり、宿代やらを稼ぐためだ。僕を先頭にして、草むらを掻き分けながら進む。背の高い雑草がしきりにザァザァと音を立てた。すると、それを聞き付けて魔物が早くも現れた。  敵はグリーンスライムが3体だ。互いが捕捉すると同時に身構える。どちらも先手を取らずに睨み合った事は僕たちにとっては好都合だった。 「オリビィエ、魔法を!」 「お任せください」  僕の言葉にオリビィエは素早く反応し、両手を組んでから詠唱を始めた。すると、辺りは不思議な空気に染まる。視認できない何者かの気配が、刻一刻と強くなっていったのだ。 『天地に宿る精霊たちよ、母なる神クロハに代わりオリビィエが命ず。奇跡の力で我らを導きたまえ』  ただ事とは思えない力が彼女の掌中に集約される。そして次の言葉で魔法が発動するのだ。 「俊敏魔法(クイック)!」  その瞬間、体は綿毛のように軽くなる。剣を逆手に持ち、手前の魔物を一撃で突き倒した。魔法は反射能力にも効果があるようで、目測を見誤る事もなかった。     
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