第一章・―息子―

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 息子とはそうする以外に、他に接し方が理解らない、どうしてこんな事になってしまったのか。  呆然として気がつけば、いつの間にか自宅へと戻っていたのだ。  それからもどうして良いのか理解らずに、ただ息子の下へと通い続ける日々が始まった――。  息子が収容された刑務所へと通うようになってから、私達親子は以前にも増して、言葉を交わす事が出来なくなっていた。  厳格に、真っ直ぐ人と対面する以外に、息子との接し方が理解らない。  だから面会時間が終了するまでずっと黙り込んで、お互いに顔も合わさずにひたすら待った。  どうしたら良いのか、どうすれば普通の親子のように。  ……隣に座った人達が教えてくれるのは、簡素ながらも言葉を交わすのだと、少し困ったような答えばかりであった。  そう、それが普通だ。  でも理解らない、どうすれば普通の親子のようになれるのか。  葛藤は更に沈黙を生み、気まずい雰囲気は、益々息子との距離を遠ざけていく。
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