第1章 桜の樹の下で

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 *  朝から引っ越し屋さんが来て、わたしとママの荷物を運び出す間、純也が餞別を渡しに来てくれた。  荷物を積み終えたトラックが出発しても、とうとう芽衣は来なかった。  わたしはママの車の助手席から、最後に公園の桜を目に焼付けようとした。  そこに、顔をぐしゃぐしゃにした芽衣がわたしを待っていた。  お互いに涙を流し、離れてもずっと親友だと誓い抱き合った。  わたしのお気に入りのブラウスは、まだ頭一つ分小さかった芽衣の涙と鼻水でびしょびしょになった。  餞別にくれた紙袋の中には、芽衣のお気に入りのぬいぐるみやアクセサリーが沢山入っていた。
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