第1章 桜の樹の下で

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 *  パパは海老名の大きなマンションに住んでいて、そこにママとわたしが引っ越して行くことになった。  いつかはそうなる気がしていたけれど、ママからの突然の宣告は、中学の入学式を10日後に控えた春休み中のことだった。  伝えなくてはならないのに、ただ時間だけが過ぎてゆく。  今日もいつもの公園で、その小さな背中ばかりを見て過ごした。  メールで伝えようと思い、何度も書いては消し、結局送信できなかった。  それにメールでこんなことを伝えたら、きっと怒るに決まってる。  喧嘩別れなど絶対にしたくない。  あさってはもう引っ越しだ。  明日、絶対に伝えなくては。
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