第1章 桜の樹の下で

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 *  「なんか元気ないよ亜沙美」  5日目にしてやっと気づいてくれた。  今言わなくては。  自転車のブレーキが鳴った。  「ジム?」  「ああ。行ってくる」  芽衣にそう答えたのは、自転車のカゴにスポーツバックを積んだ純也だった。  去年まではいつも3人一緒だった。  幼稚園の頃からずっと。  先に中学に上がった純也は部活には入らず、ムエタイという格闘技を始めたらしい。  たまにしか見かけなくなった純也は、そのたびに背が伸びていて、今ではすっかり見上げる高さになっていた。
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