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長い冬が終わりまた春が訪れた。空を映し出していた寒々しい木は、再びピンク色の衣装を身にまとう。それに伴い周りの空気も色づき、辺りは別れと出会いの雰囲気に満たされていた。 もうじき彼女と出会ってから一年がたつ。彼女と出会ってから本当に多くのことがあった。途中つらい思いをすることもあったが、それ以上に幸福な日々が心の中には満ち溢れていた。彼女と過ごした日々一つ一つが今の僕らを形作り、僕の世界に様々な色彩を与えていた。 これからもずっと一緒にいよう。この道が桜を咲かせるときも、蝉の合唱に包まれる時も、紅葉で一面が満たされる時も、木々の隙間から空が見えるときも。僕は柄にもなくそんな恥ずかしいセリフを彼女に告げた。彼女は頬を染めながら、うんと頷いた。 風にあおられ散ってゆく桜は、幻想的に舞い二人のことを祝福しているように見えた。僕たちは互いに固く手を握り合い、二人で桜並木の道を歩いて行った。
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