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彼女は今までにないようなはしゃぎ方で、すべて回りたいと無茶な提案をしてくる。今までどこか神秘的な雰囲気のせいで、こういった類のものは興味がないのかと思っていた。しかし彼女の様子から見るに、こういった子供っぽい一面があるのだと知ることができた。そこのギャップがまた魅力的であった。 結局は彼女の様子に負け、やりたいことを片っ端からこなしていった。どんな食べ物を食べても美味しいと言い、娯楽を心の底から楽しんでいる彼女の様子は見ているだけで幸せになれた。心の底から何かを楽しんでいる人と一緒にいると、その思いは伝播するのだと実感することができた。 そんな楽しかった時間はあっという間に終わりを迎え、祭りは終わり際の寂しさを孕み始めた。それに合わせて僕たちも帰路へとつく。会場を抜けいつもの通学路に戻ると、辺りは静寂が支配していた。先ほどまで活気と人混みに包まれていた火照った体を程よく冷ましてくれた。 周りには誰もいなく、涼しげな風が二人の髪をなでる。緑に染まった木々からは月光が差し込み、昼間とは異なる神秘的な魅力に包まれている。その月光を浴びる彼女は、誇張なしにこの世界の女神のように思えた。 僕の気持ちを伝えるには今しか機会がない。心のなかで直感する。僕は前を歩く彼女を引き留め、話があると切り出す。昼間はせわしなく鳴り響く蝉の声はなく、周りは完全の無音に包まれている。こうして息をひそめていると、本当に世界には二人しかいないのではないかと錯覚してしまう。その思いが僕の気持ちを後押しする。 しかし情けないことにそこから先の記憶は、はっきりとしていない。うるさすぎるほど高鳴った僕の心臓の鼓動。がたがたと震える僕の声。思っていたよりも何倍も小さな僕の声。気の利いたことを一切言えていない彼女への告白。緊張のあまり記憶はあいまいだが、取り合えず格好良い告白では絶対になかったと断言できる。
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