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彼女は最初こそ驚いていたが、それからは穏やか表情で僕の告白を聞いてくれていた。僕の情けない告白の後、彼女は少しの間思案するような表情を浮かべてから僕に近寄ってくる。僕は断りの言葉がくると思い固く目を閉じる。しかし返事の言葉が来るよりも早く、体を温かな感触が包み込む。 僕は突然の出来事に目を見開く。目の前には彼女の顔があり、距離が零であることが分かった。その状態が十秒ほど続いてから彼女は僕から離れていった。それでも体には彼女のぬくもりが残っている気がした。なにが起こったか分からず呆然としていると、彼女が突然笑い出す。もはや訳が分からなかったが、彼女曰くとても間抜けな表情をしていたらしい。 一通り笑い終えた後、彼女は出会ってから一番の笑みを浮かべてこちらこそよろしくお願いしますと了承してくれた。驚きのあまり僕が何度も本当かと聞きただすと、彼女は再び笑い出した。 それからはいつもよりゆっくりと歩きながら彼女を家まで送った。彼女を家まで送り届けられること。いつもより多く一緒にいられること。これからはもっと一緒にいられること。そのことを考えると思わず顔がにやけてしまう。彼女の家に着いてからも、少しだけ会話をする。今は一緒にいる時間すべてが宝物のように感じる。しかしいつまでもそうしているわけにも行かず、互いに名残惜しそうに別れを告げる。 一人になり落ち着いてみると、夏の涼しげな風と自然の匂いがしてくる。幸福感に満ち溢れていた僕には、その匂いがこれからの生活を期待させるようなわくわくした匂いのように感じられた。
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