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「ああー、たくさんついてる」
そう言って自分の臀部を払ってくれたのは、あの男―坂口慶だった。
「君―武田君、だっけ。相良君の後輩の」
「はあ。アンタは―」
『坂口慶』
二人で同時に言う。坂口はクスっと笑った。
「知ってたんだ。坂口です。経済学部」
「武田です。宇宙科学部」
へえ、頭いいんだね、と坂口が言うのを、内心苛つきながら武田は見ていた。
「相良さんと付き合ってる、って―」
「ああ。知ってたんだ。君もー」
相良君と付き合ってたんでしょ?と坂口は言った。
最後の芝のカスを指で摘まんで、武田は言う。
「ええ。そうですね」
「そっか。じゃあ面白くないか。悪いことをしたね」
悪びれもなく言う坂口に、武田は敵意の表情を見せる。
「別にー俺はどうでもいいです。あの人がいいならそれで」
「ふーん…」
坂口はのんびりと、武田の事を眺めていた。
「相良さんは」
口を開いた武田に、坂口は向き合う。
その言葉を言おうかどうしようか迷う。でも、武田には止められなかった。
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