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一見様お断りの老舗料亭一室にて。
上座にマコトフーズ社長である誠真一郎を座らせ、神野と倫音は接待をするように横並びで対面に座っていた。
「…それで、お客様が領収書の宛名を『アルファベット一文字のGでお願いします』とおっしゃったので、『ジー様でございますね』と返しましたら、同僚が吹き出してしまって…」
これまでの職業歴の話から、滅多にない失敗談に話は及んでいた。
「そのお客様が、本当に『爺さま』だったの?」
倫音の逸話に、神野が合いの手を入れる。
「私の方でなく、隣で接客をしていた同僚のお客様が、白髪の男性で…」
神野と誠は、一斉に沸くように笑った。
「ですが、本当に紳士な方で。同僚と共に謝罪しましたら、『しょうがないよね、僕でも笑っちゃうよ。様が付いていて良かった』と…」
「それは、君の対応が良かったからだろうね」
品良く笑った誠は、優しげな眼差しで倫音を見つめた。
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