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「大丈夫っすかね」
眠ってしまった春生を背負い、帰り道を佳乃と歩いていたアキラは、何事かを思い出したようにつぶやいた。
「恵子ママなら、心配いらないわよ。天崎さんとタカシさんが付いてるし…」
「いや、恵子ママじゃなくて、倫音さんっす。あの『今夜もパラダイス』のメイン司会やってる男…」
「『神野仁』? カリスマ・ローカルタレントとか言われて、地元番組をほぼ牛耳ってるわよね」
芸能事情に疎い佳乃でも、名前と顔が即座に一致するほど、地元では知らない者はいないとされる大物タレントだ。
『神野の冠を付けた番組は、視聴率が取れる』
『神野が気に入った駆け出しのタレントは、必ず売れる』
そんな好意的な評価に混じって、良くない噂が出回っていることをアキラは危惧していた。
「そいつ、歴代アシスタントを食っては捨てることで有名らしいんす」
ポケットからスマホを取り出すと、画面を左手親指でスクロールし、慣れた様子でローカル芸能の掲示板を開いて示す。
『【雑食】神野仁の噂【女性遍歴】』
と書かれたスレッドが佳乃の目に飛び込んできた。
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