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「食っては…って、え!? 確か、神野仁って、既婚者のはず…」
チャラさを売りにしている神野だが、作家でありコメンテーターも務める文化人枠の才女を妻に持っている。
そんな配偶者の存在をステータスの1つとして公言し、自身も有名人である男が迂闊に女遊びをするなんて…。
そう言いかけて、口をつぐむ。
それなりに地位のある妻帯者との不倫は、かつて佳乃も経験をしている。そこに踏み込んで批判する資格は、自分にはないような気がした。
アキラは、どう思っているのだろう。
もちろん、事実を知った上で交際し、春生を可愛がってくれているけれど。血の繋がらない子どもの面倒を見ることに、いずれ疎ましさを感じるようになるのではないだろうか。
そんな懸念が、頭をよぎった。
「まぁ、倫音さんに限っては大丈夫っすね!」
黙りこんでしまった佳乃を気遣うように、アキラは自身の発言をフォローした。
かつての自身の愚行に思いを巡らせている場合じゃない。アキラは、倫音の身を案じてくれているのだ。
我に返った佳乃は、力一杯アキラの発言に同調した。
「そうね。天崎さんは賢いから。変な誘惑に流されることはないわ!」
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