1.倫音、選ばれる。

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--------------------------- 実際、水着審査に倫音が現れるとオーディション会場がざわめいた。 「競泳選手?」 「場違いじゃね?」 「でも、すごい美人…」 最終選考に残ったタレントの卵たちは、それなりの経験がある者ばかりだったらしい。全員が流行りのビキニに身を包み、躊躇なく縦横無尽にポージングを決めていた。 そんな中、今にもクロールで泳ぎだしそうな格好で集団行動の体育大学生のようにキビキビと行進する倫音の存在は異質といえた。 そのまま直立不動で一礼すると、スタイルの良さに審査員たちは皆一様に感嘆のため息を漏らした。 ただ1人、除いては。 「君、面白いね~!」 MCであり、番組の象徴でもある神野仁だけは、倫音のシュールな動きに大爆笑していた。 「もう、この子で決まりでしょ。採用!」 プロデューサーより権限があるとされる神野の鶴の一言で、倫音のタレントデビューはトントン拍子で決まった。
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