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「おしまいに、もう一杯いただけますか」
空になったロックグラスを、倫音は目線に掲げる。
「この世の終わりじゃあるまいし…」
人生最後の娯楽を楽しむような物言いを一瞬、茶化しかけたけれど。今回のミッションに対する倫音の覚悟が見えたタカシは、黙って受け止めた。
「最後と言わずに、何杯でも」
琥珀色の液体が注がれた新しいグラスを差し出されると、倫音は再び同じように掲げ、覗き込むように瞳を当てた。
「こうすると、サングラス越しに見ているみたいです」
何時間も一緒に過ごしたというのに、今夜初めて、2人は視線を合わせた。
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