2.倫音、覚悟する。

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「マコト・フーズの社長から、神野仁も交えて、食事でもどうかと誘いがあったよ。もちろん、僕も同席で…」 末永が皆まで言い終わらないうちに、倫音は返答した。 「神野さんから伺いました。喜んで、お受けします」 「天崎さんって、想像以上に策士だよね」 カナコほどあからさまな言い回しではないものの、末永も同じような評価を自分に対して下していることが読み取れた倫音は、ならば話は早いと切り出した。 「お願いがあります」 「何だい?」 「食事を終えた後、マコトフーズの社長と2人きりになれるチャンスをください」 「…驚いたね。君が、そんな野心家だったとは」 直接的な依頼に、末永は目を見張った。 「君がその覚悟なら、僕が同席する必要はないだろう。先方も警戒心を持たれないように、儀礼的に僕を誘っただけだろうから」 「ただし…」と懸念の様子を見せながら、続ける。 「女好きの神野はともかく、マコトの社長は一筋縄では落ちないよ。昔は歓楽街の一軒一軒に愛人がいたっていう武勇伝もあったみたいだけど…還暦過ぎた今じゃ、そういう噂は聞かないし」 「そうですか」
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