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喫煙所を出てすぐの廊下には、いつからか倫音がカップコーヒーを片手に持ち、佇んでいた。
「飲みますか? 安心してください、カフェインレスです」
「いつから、そこにいたの? 滑稽な女だと思ってんでしょ。笑っていいわよ」
倫音の返事を待たずに、自暴自棄な様子でブツブツとつぶやくカナコを空いている方の腕で抱き締めると、倫音は静かな声で囁いた。
「滑稽だなんて思いませんし、笑う気もありません。あなたと同じような思いをした人を、たくさん知っています」
精気のない顔つきだったカナコは倫音を見上げ、初めてまともに視線を合わせた。
「うっ、うぅ…」
張り詰めていた空気が解き放たれるように泣き崩れたカナコは、しばらく倫音の肩に顔を埋めていた。
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