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和やかながらも厳かな和室の空間に、不似合いな電子音のメロディが軽快に鳴り響く。
神野の所有するスマートフォンからだった。
「ちょっと、失礼します」
手刀を切りながら申し訳なさそうな表情で席を外す神野に、上座の誠は身振りで『かまわんよ』と伝えた。
「彼も忙しい男だからね」
理解を示す誠に、倫音も静かに頷いた。
しばらくして戻ってきた神野は、息を切らせながら頭を下げた。
「すみません、急な仕事が入ったので、お先に失礼させていただきます」
「ああ、それなら私たちも…」
腰を上げかける誠を、慌てて神野が制する。
「いえ、社長と天崎さんは、ごゆっくりなさってください。締めのデザートもありますので…」
そう言いながら神野が目配せをする。視線を合わせず、倫音は会釈を返した。
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