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『【今夜も、パラダーイス】!』
壁掛けの40インチ液晶画面が、唐突に陽気な掛け声とジングルを鳴らす。
地元ローカル局制作のバラエティ番組がオンエアされる時間だった。
「もう、こんな時間? 帰らなきゃ…」
言いかけた佳乃は、昼間の大型街頭スクリーンを見た時と同じように、画面に釘付けになった。
『今日は、皆さんに新しい仲間を紹介しま~す! アシスタントの…』
『天崎倫音と申します。よろしくお願いします』
「りんねー!」
ソファーの上で眠りかけていた春生が覚醒し、テレビ画面にアップで映る倫音を指した。
「デジャビュ!?」
前のめり気味なリアクションの佳乃とは対象的に、ソファーでも背筋を伸ばしたままの倫音は飄々と伝えた。
「これは、1週間前の録画です」
40インチ画面いっぱいに映しても、倫音の肌色には一点の曇りも見えない。頬杖をついたまま観賞していた恵子は、憂えた表情で独りごちた。
「そりゃ、こんな子が現れたら、そこいらのローカルタレントは裸足で逃げ出すわね…」
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