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遡ること3ヶ月前。
「君、身長いくつ?」
販売員派遣を主な生業とする 『C・プロモーション』へ面接に出向いた倫音は、受付前で背後から呼び止められた。
「162センチです」
「そう。もっとあるように見えるね」
振り返ると、『シュッ』という擬音の聞こえてきそうな、細身のスーツが良く似合う洗練された男が立っていた。
「でも、テレビの仕事なら充分だ。オーディション受けてみない?」
「横取りしないでくれる? 末永君」
受話器を片手に2人の様子を伺っていた『C・プロモーション』販売員部門チーフである田辺亜希は、電話対応を終え、慌てて2人の間に割って入った。
『末永』と呼ばれた男は、やや高圧的な態度で続ける。
「まだ契約前だろう。彼女は、誰の物でもない」
負けじと亜希も食い下がった。
「履歴書は、すでに販売で預かってるの。天崎さんは百貨店で勤務経験もあるし、即戦力だから渡さないわよ」
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