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沸き起こる歓声も拍手も、どこか遠くの方で聞こえていた。
客席を埋め尽くすスタンディングオベーション。次々と投げ込まれるギフトの雨。
パヴェウ。
身体中が熱に浮かされていた。
強者の仮面はどこかへ落としてしまったらしい。
茫然としたまま振り返った先にリンクサイドが見えた。コーチが涙を流しながら、手放しで喜んでいる。
隣にぽっかりと空いた空間にはもう、誰もいない。
僕はもう一度前を向いて、世界中から注がれるあらゆる情熱のただ中に立ちすくみ、天を仰いだ。
永遠はここにある。
そうだろうか。
そうであるといい。
パヴェウ。
パヴェウ。
さようなら、パヴェウ。
僕はもう振り返らなかった。
そうして力強く氷を蹴り、皆の待つキスアンドクライへと滑りだした。
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