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 さくらはバタバタと階段を駆け上がって、自室に閉じこもってしまった。かなえは盛大に溜息をつき、ソファに崩れるように座る。 「いつ志望校を変えたんだ。さくらはずっとT高志望だったのか?」 「……たぶんね」 「たぶんって」 「わたしもちょっと考えたいの」  暗に「話し掛けないでくれ」と言うことだ。娘のことなのに、僕には大事なことも話してくれない。  せめて自分から話を聞こうとさくらの部屋のドアをノックした。 「父さんだけど、入ってもいい?」 「なに?」  恐る恐るドアを開けた。僕が最後に見たさくらの部屋はカーテンもベッドシーツもピンク色の、名前の通り「桜」のような可愛い部屋だったのに、いつの間にか水色のドット柄に変わっていた。そんなところで娘の成長に戸惑う。 「どうしてK高に行きたいんだ?」 「なんでもいいじゃん。行きたいから行きたいんだよ」
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