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 若い女の子ならまだしも、こんなオッサンからメールが届いても気味が悪いだけだろう、と思いながらも指は送信ボタンを押している。  仕事のメールなら催促だろうがクレームだろうが平気で打てるのに、プライベートとなると途端に汗を握る。そのうえ、なかなか反応のないスマートフォンに、やっぱり送らなければよかったとヤキモキしたりして。返信があったのは二日後。メールを開いた瞬間、曇り空だった僕の心に虹がかかった。 『おはようございます。せっかくメールをいただいていたのに、気付くのが今頃になってしまい、大変失礼致しました。描かせていただいた絵のことも福島さんのことも覚えています。今でも持っていて下さっていると聞いてとても嬉しいです。こちらこそ、本当にありがとうございます。駅前広場に行かれたのですね。お会いできなくて残念です。実は最近はあそこでは絵を描いておりません。駅前広場にはいませんが、あそこからそれほど離れていない美術館でギャラリースタッフのアルバイトをしています。毎週土曜日と日曜日におりますので、もし興味のある展示があれば、どうぞお立ち寄りください。 川原留衣』
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