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「僕は地元がここじゃないので高校のレベルとか校風とか分からないんですけど、僕の地元に限っての話なら、『なんとなく絵を描くのが好きだから』『なんとなくかっこいいから』って理由で芸術系の高校に行った人は、大抵、短大かなにかの専門学校に行ったあと、特に芸術に関係のない道に行ってます。勿論、芸術関係の仕事に就いている人もいますから、色々ですけど。K高は確か進学校ではなかったと思います。広い選択肢を持たせたいなら僕はあまりお勧めしません」 「そうなんだ。きみは芸術系の高校だったの?」 「僕は普通科の高校で、美術部と画塾で絵の勉強して、今の大学に行きました」 「しっかりしてるんだね。それだけ絵が上手いと親御さんも応援してくれただろう」  けれども川原くんは苦笑して「どうですかね」と言葉を濁した。 「ありがとう、もう一度娘の意志を確認してみることにする。話を聞けてよかった」 「僕でよければ、話を聞くくらいならいつでもできます」  そういえば、と思い出したように言った。 「どうして僕のアドレスが分かったんですか?」  川原くんは僕が名刺をこっそり失敬したことを知らない。色々と言い訳を考えたが、潔く事実を話した。本当に格好悪い話である。川原くんは怒ったり不審がるどころか、屈託なく笑ってくれた。
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