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 これまでまったく興味のなかったSNSにもついに手を出してしまった。もう時代はデジタルだし、ネットも上手く活用していけるようにならないと社会に置いて行かれる、なんて言い訳をしながら、川原くんのアカウントをいそいそと覗き見するのである。勿論、職場での立場もあるから自分の個人情報は載せない。フォローするのは川原くんだけ。  あまり頻繁に記事は投稿していないようだが、彼の描いたちょっとした絵や、どこかで食べた饅頭や、些細な記事すら見ていて楽しい。画面越しにでもその人のことを知ると、ずっと前から知り合いだったんじゃないかと錯覚すらしそうになる。勇気をだして「イイネ」を押してみると「フォロー申請」というものが届いた。これを承認すれば、ネット上でも繋がりが保たれるというわけだ。  返信のひとつひとつに口元を綻ばせたり、絵を見る度に心が温かくなったり、親近感を抱いたり。性別も年齢も関係ない。彼の描く絵が好きで、川原留衣という未来の芸術家を応援したい。だからこそ喜怒哀楽を共有したい。まったくもってファン心理というのは不可解なものだ。 『返信:デッサンも素敵ですが、油絵も素晴らしいですね。展覧会の準備、頑張って下さい。』
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