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 ***  家族三人で食事をしている時だった。ピロン、とスマートフォンの通知音に、それまで茶碗ばかり見ていた僕はハッと顔を上げた。だが、通知が来たのはさくらのスマートフォンらしく、さくらは口を動かしながらテーブルの上のスマートフォンを手に取った。 「さくら、食事中にスマホ見るのはやめなさい」  かなえの注意に上辺だけの返事をしながら、まだ触っている。今度はポケットの中の僕のスマートフォンが鳴った。さくらと同じ通知音だ。 「誰の?」 「僕のだよ」 「珍しいわね。滅多に通知音なんて鳴らないのに」 「最近、メッセンジャーで顧客と取引することがあるから」  勿論、嘘である。食事を終えてこっそり通知を確認する。川原くんからの返信だ。 『ありがとうございます。頑張ります(^^)』  たったこれだけなのに、やっぱり微笑ましくなる。顔文字が可愛い、なんて阿呆なことまで考えた。 「ちょっと、さくらッ! いい加減にしなさい! 没収するわよ! 一体誰とラインしてるのよ!」 「ラインじゃないもん。最近の中学生はネットも使いこなせないと話についていけないんだから」 「だからって食事中はやめなさい!」  かなえがどう言おうと通知音はひっきりなしに鳴り続ける。今の子どもたちはネットありきの人間関係になっているのだから、便利な反面、大変だろうなと思う。SNSは知り合いだけでなく、まったく面識のない人ともすぐに「友達」になれて、自己発信ができて、注目を浴びて、簡単にちやほやされる世界だ。大抵の人間ならのめり込むだろう。さくらに「やってはいけない」と言うつもりはないが、自己防衛の大切さは教えておかないと……と、一抹の不安を抱いた直後のことだった。
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