2

15/15
前へ
/134ページ
次へ
「ゴルテックの息子夫婦は、山下さんの紹介で知り合って結婚したんだよ。息子のほうは見合いをする前に彼女がいたんだけど、嫁さんのほうがどうしても後藤さんとじゃなきゃ結婚したくないって駄々こねて、後藤さんと仲の良い山下さんに口利きしてもらったわけさ」 「略奪ですか。紹介する山下さんもすごいですね」 「んー、でも両親が別れさせたがってたから、ちょうど良かったみたいよ。嫁さんは河村交通の娘で、いいトコの子だし、結果的に息子も嫁さんの猛烈アタックに堕ちて、できちゃった婚したんだ」 「よく知ってますね……」 「銀行員ならこのくらいの情報持っておかないと駄目だよ」 「人間、駄々をこねてみるもんなんですねぇ。大人になっても恋愛って盲目になるんですね」 「田口くんは盲目になったことある?」 「ははっ、学生時代の話ですけどね」  じゃ、書類作ってきます、と残して田口は席を立った。  恋愛に盲目か。いい歳をした大人でもなりふり構わず飛び込むのだから、恋を覚えたてのほんの十四の中学生なんか、それこそ「この人じゃないと考えられない」くらい夢中になるだろう。あまり認めたくはないが、さくらも盲目になっているのだと思う。僕は盲目的な恋をしたことがないから、理解しがたいけれど。  ……なんて、うっかり口にしたらかなえに殺されるので、今のはナシということで。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1225人が本棚に入れています
本棚に追加