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「僕が中学生の頃も、親に何か言われる度にいちいち反発してました。放って置いてくれって毎回言ってました。ある時、買いたい本があるのにお小遣いがなくて、親の財布から黙って千円を持っていったことがあるんです。でも、それがバレて。絶対また怒られるんだろうなってうんざりしてたら、全然怒られなかったんです。ただひと言『必要なら言ってくれればいいのに』って。その時はなんだかものすごく悪いことをしたと反省したんです。素直に口に出す年齢じゃなかったけど、心の中ではごめんなさいって謝りました。怒られると反発するけど、怒られないと反省する。そんなもんじゃないですかね」
自分の思春期なんてもう遠い昔のことだけど、当時の僕もそうだったかもしれない。反抗期らしい反抗期もなかった、面白味のない青春時代でも、それなりに葛藤であったり、世の中の不条理や理不尽に無意味に反感を持つこともあった。自分が好きなものだけを正義だと決め付けて、それを非難されたらむやみに楯突く。
「なんだかんだで、親の言うことってちゃんと聞いてますよ」
「そうか……。そうだといいな。実は娘のSNSのことは妻には話してないんだ。本当は真っ先に相談するべきだったんだろうけど、妻はカッとなると高圧的に責め立てるから、なかなか言えなくてね。自分じゃどうしようもないから、いつか話してたとは思うけど。でも川原くんに聞いてよかった。僕から娘にもう一度話してみようと思う」
「え……、奥さんに話さなくていいんですか……? 偉そうな口をきいてしまったけど、僕が聞いて本当に良かったんでしょうか……」
「僕が聞いて欲しかったんだ。きみに」
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