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僕が勤める銀行は地域密着型なので、取引先がどんな小さな会社でも、それまでの実績と信頼があれば、頼まれたことにはなるべく応えるようにしている。今日は昔から取引のある洋菓子店のオーナーの家へ行く。オーナーはもう還暦近く。経理を担っているのはオーナーの奥さん。この洋菓子店からは定期的に入金があるのだが、奥さんがしょっちゅう銀行に行くのは大儀だからと、毎月月末に僕が奥さんのところへ赴いて、僕が入金処理をすることになっている。本当はこういう仕事こそ栗田のような若い者にさせるべきなのだろうが、この洋菓子店は三年前に僕が担当になってからすっかり僕を信頼してくれているので、係長になろうと課長になろうと必ず僕が対応している。
「いつもありがとうねぇ、福島さん。家まで来てくれるの本当に助かるわぁ」
「僕にできることならなんでもしますよ」
「これが今月のぶんね」
現金の入った袋をどさっと渡される。僕はさっそく端末機で入金処理に取り掛かった。僕が作業している傍らで奥さんが話し掛けてくる。
「福島さんも課長さんなのに、申し訳ないわね」
「いえ、優秀な部下がたくさんいるんで、安心して出られるんですよ」
こそっと耳元で「僕が出向くのは奥さんのところだけですし」と加えると、奥さんは「まあ」と満更でもなさそうに笑う。
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