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穴の中
「うわぁぁぁぁーーー死ぬぅぅーーーー……っん?」
妙な浮遊感に包まれたかと思うと辺りに明かりが灯り、気付いた時には地面にいた。そして、そこには大量のネズミたちがいた。
うわぁっ!一瞬、心底驚いたが、人間のように手足を器用に使い、踊りを踊るネズミ達。よく見ると小さなテーブルが置かれていた。そこには、食事まで。何度見ても米粒だった。おもてなし……か?俺のおにぎりだよね?
そっかそっか。良かった。フィルム歯で取れたんだね?たぶん。しかし、目の前で楽しそうに踊るネズミ達を見ているとどこか心が安らいだ。
ちゅうちゅうとしか聞こえてこないがなぜかネズミ達の言いたい事が理解できてしまった。
『おむすびころりん、すっとんとん』
『美味しいおにぎりありがとう』
本当に楽しそうなネズミ達。これはまさに昔話だ。俺は思い出した。この後の展開に息を飲んだ。確か……。
ネズミ達が穴の奥からいかにもな黒光りするお重を大勢で押してきた。
やばい。こんなにも胸がドキドキするなんていつ以来だろう。
高鳴る鼓動を抑え受け取ろうとした時。
ちゅうちゅう!っとネズミ達が大慌てしだした。
何だ何だ?猫か?慌てたネズミ達がぶつかってお重の箱が開く。
あっ!欲張りじぃさんか?ちょ、待てよ!俺の番まだ終わってないから!急かすなよ!
だんだんと暗くなってくる。お返しを逃すまいとお重の中身を必死に掴む。
やばい。真っ暗だ。俺はどうなるんだ?どこから出ればいいんだよ?どうしたら……。っと、思っていると再び浮遊感に包まれ辺りが真っ白になり。俺は夢の中にいるような不思議な感覚になった。
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