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「いえ! アンドレア様が来てくださったのが凄く嬉しいのです。でも……、最近兄が兵で駆り出されていて、連絡も取れないもので。何をしているのかも分かりません」
「そうですか」
「どこに配属されたのか、何をしているのか。ローランド国の王は詳しいことを教えることなく、奴隷にように兵士にしてしまいます。兄がどこにいるのか……不安で、心配で」
アメリアが気落ちして肩を落とした。
ローランド国の内情は大まかに把握している。しかし、身分あるものまで容赦なく徴兵し、しかも配属先も教えられないとは、家族にとっては不安で仕方ないことだろう。
無事を祈る、その言葉を言おうとした時に、言葉に詰まった。
(敵国の令嬢に、何を感傷的になっている)
例え人違いされているとしても、すぐに同情の言葉が口をついて出るほどアドニスは器用ではない。しかし、アメリアや国民の状況が苦しいのが理解出来ないわけではない。
その狭間で、アドニス自身もやりきれない想いになってしまう。
沈黙してしまうと、アメリアが顔をあげた。
「いけませんね。王に背くような事を言うなど。誰が聞いているか分からないのに」
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