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今まで幾度となく繰り返したことを、まるで沸々と思い出してしまう。
(帰国命令が出ないせいか)
いつもなら、暗殺と同時に国に逃げることが出来た。
しかし、今回はローランド国の王の動きを見ながら暗殺の指示を送り続けると言われている。今後の様子を見ない限り、帰国の命は出ないだろう。
血の匂いがまだしそうな手でティーカップを持つと、爪先に赤いものが見えた。
「っ!」
思わずティーカップを落としてしまうと、アメリアが心配そうに顔を見つめてくる。
綺麗に拭き取った筈だし、余計な衣服は捨てた。
しかしわずかに残るそれは、確かに血の赤が凝固し赤黒くなったものだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ……いや……。なんでもない」
「メイドを。服が濡れてるわ」
アメリアが近寄り、アドニスの服に触れそうになった。
綺麗な指先が、自分の汚い身体に触れそうで身を捩った。
「大丈夫だ……。メイドにやってもらえばいい」
「でも……これくらい私でも」
すっと一歩前に出て来て、アドニスの服に跳ねた紅茶をハンカチ―フで拭い始める。
その光景をただ見ているしか出来ず、アドニスは身を固まらせた。
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