第一章

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(アンドレア、という人間をよほど信頼しているんだろう)  身代わりに邸に入ったことを悔いて、アドニスはそっとアメリアの肩に手を置いた。  そして身体から離すと、アメリアは首を傾げた。 「もう大丈夫。そろそろ帰ります」 「でも。シミになります。メイドを呼びましょうか」 「いえ」  アメリアの細長い指先が、自身の服に触れただけでも激しい嫌悪感だった。  無垢な青い瞳が、きょとんと見つめてくるのだってアドニスの心を痛める。  一歩下がり頭を下げると、アメリアがすっと手を引いてきた。 「お休みになってください」 「いや……大丈夫です」 「調子が悪いのでしょう? 部屋なら沢山あります。父もいますから」 「だが……」  アメリアはアンドレアだと思い込んでいるからいいだろう。  しかし、アドニスは年頃の若い娘から突然泊まっていけと言われて、どうしたらいいのかわからなくなった。こんな治安の悪いなか、彼女はどこか無防備過ぎて放っておけないような気もする。  本物のアンドレアが現れないのも、気がかりだ。 「分かりました。一晩だけ」 「お疲れなら、いつまででも。邸に父だけだと物騒ですから」 (だからといって……)     
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