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アドニスが逡巡しているうちに、アメリアはメイドに命じて部屋を用意し始める。
「アンドレア様は、いつもお忙しいと聞いております。父の友人としてもてなしたいだけですから」
(父の友人。アメリアはそいつを知らないのか)
いまいち合点もいかないまま、アドニスは部屋に通されてしまった。
埃っぽさの残る寝室は空気の入れ替え中で窓が開け放たれ、調度品も細工の凝ったものが多い。ローランド国は、装飾品の工芸が盛んで、本来ならそれだけでも国が潤い豊になるはずだった。
王が更なる繁栄を望み、国外にも手を伸ばしたいと言い出して、本来の工芸が衰えてしまったことは、国民にとっては悲しいことだろう。
メイドが下がり、アメリアが触れた胸元に手を置いた。
服越しだが、温かさを感じたのは久しぶりだ。
(いずれ、俺にも妻が選ばれるのだろうな)
アメリアのような無垢な女性か、それとも気位の高い令嬢かはわからない。
王に背くことなく、命令のままに従えば、生活は保障される。
ルート国は豊で住みやすい国だし、のんびりとした人と気候で居心地もいい。
王もオーランド国のような侵略行為が近隣になければ、今頃はのんびりと国政をしていたろう。
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