第一章

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 あまり長居したくはないし、もうひとり殺せと言われたら自分の命はあるだろうかと不安になる。  すでにひとり要人を葬り去った後に、城に潜入するのは難しい。 (帰らせて欲しいものだ)  アドニスは背を伸ばしつつ、邸に向かい歩いた。  店はほとんど閉まり、買い物がしたければ執事に金を持たせて闇市に向かわせるしかない。  物流が滞っているし、金の強奪も横行している。  王都に侯爵が住んでいるのは命令であり、命がけでもある。  ボロを着た男が酒を飲んでふらふらと歩いているのが目に入った。  その横を女性や子供が通り過ぎようとしている。  咄嗟にアドニスは女子供の間に入り、酔っ払いから庇ってしまった。  何もすることなく、女性から訝しい顔をされてため息を吐く。 (この街はもっとひどくなる……)  ひとり要人を殺害したことを後悔しそうになる。  いっそ、戦争が始まればここの街の人間は解放されて他国へ逃げることが出来る。  他国だって軍を持っているし、協力関係にある。避難民を受け入れることだってするだろう。  戦争を恐れるあまり、互いにけん制しているが、ようはオーランド国だけを潰せばいいのだ。     
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