第一章

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 愛らしい人形のようで、ローランド国でひとり歩くには物騒ではないかと思える。  そのアンドレアという男が邸で待てと言わなかったことに、少し驚いてしまう。  この治安の悪さは誰もが知るところだと思うし、見ればふらりと出て来たようにも見える。 「おひとりで?」 「ええ。すぐそこだから、メイドもいらないと思ったの。アンドレア様もすぐ見つかると聞いていたから」 「あまりお勧めしません」  アドニスは眉間に皺を寄せた。ひったくりに合うかもしれないし、そのまま人買いに連れ去る可能性だってある。  ぱっと見はいつもとは変わらないようにも見えるが、物騒な人間が紛れているのは間違いのだ。自分も含めて。 「……すみません」    令嬢が頭を下げるので、アドニスははっとした。 「お名前を……」 「まあ、いやですわ。お忘れに? アメリア・ビースレイと申します。一度名乗りましたのに」 「申し訳ない」 (この綺麗な金髪といい、顔立ちといい……どこかで見たような気がする。それに『アメリア』と)  アメリアとは初対面な筈だし、その証拠に彼女も自分を知らなかった。  ではこの既視感はなんだろうか。 『アメリア』と名乗られたときの罪悪感はなんだろう。     
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