第一章

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「ああ。そうだった。何度見ても、慣れないものでね」 「そうですよね。私と父とふたりだけですもの」 「なんだって……」  アドニスは目を見開き、か弱い肩が震えたのを見落としそうになった。 (きっと、それも前に説明されている……はずだ) 「失礼。何度聞いてもこれも慣れないもので」  咳払いをしつつ、アドニスは信じられないと、邸を見渡す。  大げさな嘘だとは思えないが、この治安の悪いなかで父とふたりきりなど物騒で仕方ない。それに、兵の招集がかかれば、父親だって出向かなければいけないだろう。  そんな日がこないとも限らないのに、アメリアは弱さを感じない。 「本当に。こんな風に国が乱れなければ、父とふたりでも気楽でした」  アメリアはティールームに向かって歩き、そっとメイドが扉を開けた。  部屋は綺麗に整っているが、人気がないせいか寂しさを感じる。  ソファに通されてアドニスが腰掛けると、アメリアはスツールに腰掛けた。  メイドがすぐにお茶を持ってくると頭を下げて出て行くと、アドニスは居心地の悪い気分になった。  ブルーの瞳が寂し気に俯いて、何か物思いにふけるようだ。 「お疲れなら、帰りますが」 (外の衛兵もいないだろう)     
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