桜日和

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でもいざ二人になると居づらい気がした。 二人でとりあえずプレステをした。 しながらタイミングの計り合いだ。 言葉を慎重に選ぶ。 フミがキスを待ってるのを肌で感じる。 やたら目が合う。 わけのわからない言葉を続ける。 言いたいことは結局「付き合う?」とかそんなことだ。この場に関しては、だ。 爪痕は残したい。 いつの間にかキスしている。抱き合っている。 直前の瞬間はスローに見えた。 こうして何人もの男が彼女の体を通り過ぎてったのが分かる。 香水とメンソールの味がした。 囁くように言った。 「でも今日は生理なの」 痩せた体、小ぶりのバスト。 「胸ちいさいやろ?」 「そんなことないよ」 キスをひたすら続けた。 「そんなに経験多くないから下手やでマグロチックやで」 そんな会話が続く。このままこうしているのもいい。 しかし、すぐにみんなが帰ってきた。 気まずい雰囲気が出来上がっていた。 そのまま朝まで雑魚寝をし、始発で帰ることになった。 朝になればフミは昨日のことを反省しだした。やりすぎた、付き合うのは もう少し良く知ってなってからにしよう、と。 たぶん、こんなほかの男ともそうなってきたのだろう。 勢いも初めだけ――悪魔将軍と闘った時のバッファローマンを思い出した。 一応聞いてみる。 「彼氏いてないの?」「うん」「・・ほんまは?」「・・いてる」 朝の光がまぶしい。帰り道、電車を待ちながら、友達に電話してみる。 「・・で、二人きりになって、なにしてたん?」 「一晩中ゲームをしてた」 「ほんまは?」 「ほんまは・・キスしてた」 あの日は少し冷たい春風が吹いた日で、線路沿いにの道に桜の花びらが綺麗に舞っていた。 気まずさだけを残し、20歳の誕生日を迎えたのだった。 あれから20年。 桜の字をよく見ると木偏にツを書いて女か。 ツンデレ女か、と桜を見ながら思った。
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