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「ほんと、気持ち悪いわねあんたは!!」
まただ。また、弟が母親と名乗るあの屑野郎に殴られてる。
もう、抵抗も何もない。ただその時間が過ぎるのを待つだけだ。
「なんなのよ、その髪は!」
どうやら、その母という生き物は弟の、奏汰のキレイな銀色の髪の毛が気に入らないらしい。
「あんたは魔女よ!呪われてるの!その髪も紅い眼も!そのせいでわたしは捨てられた!そうしてくれるの!」
そう言いながら、汚い色の髪の毛を振り乱しながら自称母親は奏汰を殴り続ける。
魔女、と言った。
ばかばかしい。そもそも奏多は男だ。女なんかではない。私に言うならいざ知らず、奏汰に言うのは大きな間違いだ。
しかし奏汰はそこいらの女子が顔を背けるほどの美少年だ。銀の髪と紅い眼は、神秘的な雰囲気を感じさせる。
おとなしく、ぼーっとすることの多い奏汰は、そんな見た目と性格から天使と呼んで差し支えないだろう。
あの自らを母と言うアバズレの方がよほど魔女に近い。自分のことしか考えず、家事も奏汰に任せきりだ。
私に任せてくれればいいのに、奏汰はそれでもあんなババアが大事らしい。
私は、それが不満だった。
奏汰を子として愛さず、ただ道具のように使い続けるあの女が、たまらなく憎かった。
けれど、奏汰が我慢しているので、姉である私が勝手なことをするわけにはいかない。
今日もあの女のことを恨みながら、弟の無事を祈るしかないのだ。
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